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マイティ・ハート/愛と絆 ほか

2007年10月04日

シネマ・チェック (★=20点 ☆=10点)

マイティ・ハート/愛と絆
A Mighty Heart/MA
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ムービーレビューパキスタンで誘拐、殺害された
ジャーナリストの妻の手記を
元にした社会派のドラマ

10月18日公開予定 ★★☆(TK)

 離婚するとか、養子がもっと欲しいとか、ゴシップの定番になっている「ブランジェリーナ」。そう、ブラット・ピットとアンジェリーナ・ジョリーのカップル2人を指す造語。この造語が広く一般的になるほど、話題に事欠かない2人だが、プロデューサーがブラピ、主演女優がアンジーと、まさにブランジェリーナ映画と呼べるのが今回紹介する「マイティ・ハート/愛と絆」。
  2002年にパキスタンのカラチで取材中にテロリストに誘拐され、殺害された実在のジャーナリスト、ダニエル・パールの妻が書いた手記を元にした社会派のドラマ。ウォール・ストリート・ジャーナルの記者ダニエルは、妊娠中の妻マリアンヌと友人たちを呼んでのディナーの約束をした後、取材に出かける。ディナーの時間になっても戻ってこない夫を心配したマリアンヌは、彼と連絡を取ろうとするが、携帯はつながらないまま。そして、連絡が途絶えてしまった夫の捜索が、マリアンヌや友人たち、地元の警察によって開始される…。
ムービーレビュー  カンヌ国際映画祭でも上映され、ブランジェリーナ映画ということもあって大きな話題になった作品だが、かなり地味。アンジーってことで、テロリスト相手に派手な銃撃戦とか、アクション・シーンを期待してしまうが、実話なので、当然そのような展開はなく、大きな盛り上がりもなく終わってしまった。夫の無事を祈る気丈な妻を、ほとんど出ずっぱりで熱演しているアンジーだけど、見ていて、「アンジーがんばってるなぁ」って程度で、魅力あるキャラクターにはなっていなかった。もっとマリアンヌの優しさとか、弱いところを強調しないと、彼女の秘めたる強さが浮かび上がってこず、彼女に共感するのが難しかった。
  もとは、このマリアンヌ役はブラピの元妻、ジェニファー・アニストンが演じる予定だったそうで、共感という点では、ジェニファーの方が向いていたかも ? まあ、アンジーの強さはジェニファーには感じられないから、どっちもどっちかな ?
  パキスタンを舞台にした政治性の強い作品が続いたマイケル・ウィンターボトムが監督だけど、今回はハリウッドの豪華キャストってことで、しっくり馴染んでないような気がした。実際、こういった実話の映画化は難しいと思う。どこまで事実に忠実にするのか、どこまで映画としてのフィクションを入れこむのか。その辺りの微妙なさじ加減に、映画が成功するか、失敗するかが懸かっている。アンジーも、フランス語訛りでカーリー・ヘアにして本人に似せようとしているが、キャラクターに深みがなく、残念ながら熱演が空回りしていた。
  できれば映画より、オリジナルの手記をゆっくり読んでみたいと思ってしまった。


ムービーレビュー
イヤー・オブ・ザ・ドッグ
Year of the Dog/M
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10月11日公開予定 ★★☆(TK)

 何をするにも愛犬と一緒の中年の独身女性ペギー。しかし、その最愛の犬に死なれて失意の日々。ようやくペット・シェルターで働く男の仲介で新しい犬をもらい、気分を変える彼女。その彼に犬の訓練をお願いし、何となく彼と恋心が芽生えるが…。とってもヘンテコな映画。ストーリーが予測しない方向へ進んでいき、オフビートな笑いが満載だけど、かなり見る人を選びそう。主人公からして感情移入は難しく、そこに結婚熱に浮かれる同僚や、出世しか興味のない上司、お金持ちの弟夫婦、狩猟好きの隣人の男などが登場するが、誰とも深く関われない主人公。自分も理解不能でした…。



ムービーレビュー
ディープ・ウォーター
Deep Water/G

10月11日公開予定 ★★★(TK)

 雪山の遭難事故を再現した『運命を分けたザイル/Touching the Void』のプロデューサーによる新作。今回は、雪山から一転、洋上のヨット・レースをテーマにしたドキュメンタリー。1969年にロンドン・タイムズがスポンサーして開催されたノン・ストップの世界1周単独ヨット・レース。それに参加した9人の男たち、そのうちの1人が、ドナルド・クロウハースト。彼はセーリング経験も豊富ではなく、かなり無謀なチャエレンジだったが…。見渡す限りの海、その中で孤独と戦いながら、同時に、後には引けない状況で、彼は何を考えたのか ? 深い内容です。



ムービーレビュー
デス・アット・ア・フューネル
Death at a Funeral/M

10月11日公開予定 ★★★(KIK)

 ある男の葬式の日の朝、故人の息子のダニエルは極度の緊張感に苛まれていた。父の死はもちろんだが、有名な小説家である弟ロバートがやって来るので、成功していない自分に対して、親戚一同から何を言われるのかと、うんざりしていたのだ。葬式に参加する家族、親戚たちもまた、何らかの理由で不安を抱えていた。そこへ葬式業者のミスで、別人の棺が届けられ、これを発端として、葬式は混乱し始める…。ケビン・クライン主演の『イン&アウト』やニコール・キッドマン主演の『ステップフォード・ワイフ』などの監督フランク・オズの新作。けっこうブラックで笑えます!



ムービーレビュー
スーパーバッド
Superbad/MA15

公開中 ★★★ (KK)

 モテない男子高校生の姿を、鋭いジョークと体を張ったギャグで描いた青春コメディー。『ザ・フォーティー・イヤー・オールド・バージン』や『ノック・アップ』をヒットさせたジャッド・アパトウ監督がプロデューサーを務めている。ジョナ・ヒル演じるセスとマイケル・セラ役のエバンは、それぞれ恋の悩みを抱える高校3年生。何とか初体験にこぎ着けたいセス、同級生に長年片思いのままのエバン…と、まさに“モテない君青春奮闘記”的な設定なんだけど、本編を通して描かれる辛辣なギャグやユーモアのセンスは本気で笑える。肩の力を抜いて楽しみたい時はこれ !

かわいいおデブちゃん登場:ヘアスプレー ほか

2007年09月05日

シネマ・チェック (★=20点 ☆=10点)

ヘアスプレー
Hairspray/PG
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01.jpgかわいいおデブちゃん
トレーシーが主人公の
ハッピーなミュージカル映画

9月13日公開予定 ★★★☆(TK)

 1970年代初頭に「ピンク・フラミンゴ」という、かなり悪趣味な映画があった。ジョン・ウォーターズが監督し、巨漢のドラァグ・クイーンのディヴァインが主演し、日本でもカルト的な人気を誇る作品だ。
  そのジョン・ウォーターズが同じくディヴァインとともに制作した映画が「ヘアスプレー」。その映画から、かなり毒の部分を取り去ってミュージカルにしたら、ブロードウエイで大ヒット。そして、そのブロードウエイ版を再び映画化したものが今回紹介する「ヘアスプレー」だ。映画がまずミュージカルになり、それを再映画化と、あの「プロデューサーズ」とまったく同じパターン。もう当たり前となった、ヒットした作品は必ず続編を制作したり、シリーズ化してしまうといった、ハリウッドのネタ不足を露呈する傾向のひとつと言っていいと思う。まあ、今回の作品は成功しているからいいけど…。
  ストーリーは62年のボルチモア。大っきな体のトレーシーは、歌とダンスが大好きで、地元で人気のダンス番組「コーニー・コリンズ・ショー」に夢中。その番組が新しいダンサーのオーディションを行うということでさっそく参加するけど、おデブちゃんのトレーシーは会場から追い出されてしまう。しかし、運良く出演者の目にとまって、見事メンバーの一員となって出演することになるが…。
  とにかく、主演のトレーシーを演じる新人ニッキー・ブロンスキーがかわいい! おデブちゃんってことをまったく悩んでないところが、見ていて気持ちいい! その彼女の底抜けな明るさが、この映画がカラフルでハッピーな気分にさせるミュージカルとして成功している一因になっている。

01.jpg  また、主演の彼女以上に話題になっているのが、そのトレーシーのお母さんを演じるジョン・トラボルタ。初代の映画ではディヴァインが演じていたということで、今回も男性俳優が演じているのだが、かなりスゴイ! ただトラボルタが女装しているだけではなく、特殊メイクで超おデブちゃんに! はっきり言って顔がアップになると、かなり恐い! しかし、彼が旦那役のクリストファー・ウォーケンとラブラブなダンスを披露したり、これがまた以外とかわいかったりして…(嘘)。でも、トラボルタって「サタデーナイトフィーバー」「グリース」「パルプフィクション」と、映画史に残るダンス・シーンを連発してるけど、これも歴史に残るのだろうか? ぜひ自分の目で確認を。
  突然自分の気持ちを歌い出しちゃうミュージカルのノリが苦手な人にはお薦めしないけど、体がムズムズ動き出しちゃうほど、楽しいミュージカルで、元気になれる映画。その割には、黒人問題がテーマになっていたり、普段はスポットの当らないおデブちゃんが堂々の主演だったり、オリジナル監督のジョン・ウォーターズのフレーバーはしっかり残っていると思う。そのジョン・ウォーターズがカメオ出演しているのも、笑った!


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ONCE ダブリンの街角で
Once/M
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公開中 ★★★★☆(TK)

 先に公開されているアメリカで、各メディアから大絶賛されたアイルランド映画。アイルランドの首都、ダブリンの路上でギターの弾き語りをしている男性と、チェコからの移民の若い女性が音楽を通じて惹かれあっていくというシンプルなラブ・ストーリー。何でもないストーリーに、即興で撮影されたような画像、でもそこから思わず抱き締めたくなるような愛しい気持ちが沸き上がってくる。一風変わったミュージカルのようでもあるけど、映画の満足度はかなり高い。主演の2人はともにミュージシャンで、劇中の音楽は本作のために2人が書き下ろしたもの。サントラも大注目! 今月のイチオシ!



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スターダスト
Stardust/TBA

9月20日公開予定 ★★★(TK)

 監督が、あの「レイヤー・ケーキ」のマシュー・ヴォーンということで期待した1本。クレア・デインズ、ミシェル・ファイファー、ロバート・デ・ニーロと豪華な出演陣で、特撮もあるけど、冒険ファンタジーってことで、かなりお子さま向けの仕上がり。ミシェル・ファイファーが若さに執着する魔女役、ロバート・デ・ニーロは海賊のキャプテンなんだけど、はっきり言って彼、「新春スター隠し芸大会」でも見ているようだった! 楽しんで演じていると言えばそれまでだが、昔を知る人にはちょっと悲しいかも…。あのギャング系映画で成功した監督に、ファンタジーを撮らせたことが間違いの元。



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ネクスト
Next/M

公開中 ★★☆(TK)

 このところすっかり額の広くなったニコラス・ケイジが主演のSFアクション。自分の未来を2分間だけ予知することができるラスベガスの二流マジシャンが主人公。その彼の特殊能力に目を付けたFBIエージェントが、彼を使ってテロリストの核爆発を防ごうとするが…。今が旬のジェシカ・ビールがニコラス・ケイジと恋に落ちるのだが、ヘア・スタイリストはどこ?っていうケイジのおばさんヘアに、唖然! どう考えても不釣り合い! デンゼル・ワシントンの「デジャブ」とセットで見ると、デジャブ体験ができるという、突っ込み所満載B級映画。でも、そこが魅力だったりする…。



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ジャムド
The Jammed/MA

公開中 ★★★☆(TK)

 人身売買をテーマにしたオーストラリア映画。メルボルンで会社勤めをしているアシュリー。彼女は、偶然中国から娘を捜しに来たという母親と会う。初めはいやいやながらその母親を助けていた彼女だが、次第に危険を承知の上で深く関わり合ってゆく…。普段あまり目にすることのない、オーストラリアでの人身売買の現状を、デジタル・ビデオを使い、ドキュメンタリー・タッチで描いたクライム・スリラー。オープニングから中盤までの展開は迫力があるが、後半、ストーリーが映画的な盛り上がりを見せ始めると、それまでのドキュメンタリー的雰囲気が崩れてしまったのは残念。

マイケル・ムーア監督:シッコ ほか

2007年08月03日

シネマ・チェック (★=20点 ☆=10点)

シッコ
Sicko/M
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01.jpg「華氏911」の
マイケル・ムーア監督
今回はアメリカの医療問題が標的

8月9日公開予定 ★★☆(TK)

 オスカー受賞作「ボウリング・フォー・コロンバイン」「華氏911」と、今まであまり注目されることのなかったドキュメンタリー映画を、一流のエンターテイメントに仕上げたマイケル・ムーア監督。その彼の新作ドキュメンタリーが、今回紹介する「シッコ」。
  タイトルの日本語の響きは、ちょっといただけないが、英語の意味は、精神障害者、変質者。今回の映画では「病人」という意味で、アメリカの医療システムを取り上げている。
  オーストラリアには、日本の国民健康保険のような「メディケア」があるが、福祉が充実しているオーストラリアにしては、ほかの失業保険などの制度と比べると、かなり劣っている。多くの人が「メディケア」では十分な安心が得られないので、民間の医療保険に加入しているのが現実だ。しかし、この映画を観ると、それでもあるだけはマシと思わされる。
  今まで知らなかったが、アメリカでは国民健康保険制度がなく、民間保険会社への加入は必須だそうだ。しかし、この民間の医療保険が、またいろいろな問題をはらんでいて、驚くべき事実が次々と出てくる。
  もともと、アメリカの医療費は世界一と言われているように、バカ高なのだが、当然保険料もそれに伴って、バカ高!だから、その保険料が払えず、保険に未加入の国民が5,000万人もいるそうだ。冒頭に出てくるオジサン、保険には加入していなくて、ある日、事故で指を2本切断した。そして、医者から「中指を縫合する治療費6万ドル、薬指の縫合は1万2千ドル」と言われ、結婚指輪をはめる薬指のためにバーゲン価格の1万2千ドルを選んだそう。なので、彼の中指はありません!
01.jpg  まあ、保険に入ってなかったのが悪かった、と言えばそれまでだけど、保険に加入するためにも条件があって、保険会社から拒否されることもあり、たとえ保険に入っていたとしても、保険会社は民営なので、当然利益追求のために、いろいろな条件を付けては保険金請求を拒否する…。あの先進国と言われているアメリカで、こんな事態が起こってるとは信じられない。ただ、毎回いい素材を見つけてくるマイケル・ムーアだけど、今回は、取り上げた制度自体が大きすぎて、あくまで問題提議あたりで留まってるところが惜しい。
  映画全体としても、過去の作品のような、アニメーションを使ったり、体当たり取材的なものがかなり弱くなっているので、内容ではなく、ドキュメンタリー映画として見た時、あまりパワーを感じられなかった。フランス、イギリス、キューバと他国の医療制度と比べるシーンがやたらと長く、その辺りはサラリと扱って、もっと自国が抱える問題に焦点を当て、保険会社でも、政治家でも、マイクをガンガンと突き付けてほしかった。やはり激突取材が彼の面白いところだと思う。
  デーマとしてはマル、だけど、ドキュメンタリー映画としては、もう少し工夫が必要な気がした。


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ブラック・スネーク・モーン
Black Snake Moan/MA
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8月2日公開予定 ★★★☆(TK)

 オスカーにノミネートされた「ハッスル・アンド・フロウ」のクレイグ・ブリュワー監督の新作。子どものころの虐待の影響でセックス依存症になってしまったレイ。道端で倒れていた彼女を、家に連れて帰り看病する元ブルース・ミュージシャンのラザラス。彼は、音楽を通して彼女の心を再生していくのだが…。サミュエル・L・ジャクソンがクリスティーナ・リッチを鎖で監禁、調教!ということで、かなり過激な映画だと思うかもしれないけど、2人のストイックな関係に、サミュエルのブルースと、味わいの深い作品に仕上がっている。ジャスティン・ティンバーレイクはがんばってるけど、主演2人に対してちょっと役不足か?



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ブラック・シープ
Black Sheep/MA

8月16日公開予定 ★☆(TK)

 お隣、ニュージーランドからのホラー映画。遺伝子操作に失敗した羊が人食い羊となって人間に襲いかかるというストーリー。ま、おバカ映画です! しかも、羊に噛まれた人間は羊人間になってしまうという展開で、ゾンビ羊版、と言った感じ。人間の数より、羊の数の方が多いというニュージーランドならではの企画なんだけど、これがあまりに定番過ぎて、笑えない…。おバカ映画って好きなんだけど、セオリー通りの展開で、すべて先が読めてしまうのは、最初のアイデアだけで強引に脚本を作ってしまったからか? それにしても、人の皮膚ってあんなに伸びるもんなんでしょうか?



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スノー・ケーキ
Snow Cake/M

8月2日公開予定 ★★★(TK)

 ベルリン映画祭のオープニング作品。イギリスからカナダにやって来たアレックス、彼はヒッチ・ハイカーのヴィヴィアンを車に乗せることにする。しかし、事故で彼女は死んでしまい、事故の説明をしようと、彼女の母親に会いにいくのだが…。「ハリ・ポタ」でもお馴染み、アラン・リックマンとシガニー・ウィーバーが共演する、ユーモアの効いた心温まる映画。シガニー・ウィーバーの演技がちょっと鼻につくんだけど、日本人としては、ドリフターズの「ミヨちゃん」のB面、「のってる音頭」で踊りまくるシガニー・ウィーバーが見れるというお得(?)なシーンが用意されている。雪のケーキのシーンも好き!



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ボイントン・ビーチ・クラブ
Boynton Beach Club/M

8月23日公開予定 ★★(TK)

 アメリカ、フロリダのボイントン・ビーチ。退職者が大勢住むビーチ沿いの特別住宅区域には、夫や妻と死別した人のためのクラブがある。そのクラブで起こる出会いや別れ…。おじちゃん、おばちゃんのロマンティック・コメディー映画とでも言えようか。孤独に耐えられず、嘘をついてクラブに参加する女性、インターネットのサイトでメールを交換する人もいれば、近くのバーで相手を見つける人もいる。ちょっとした悲しみに笑い…、なかなかいい映画なんだけど、やはり年齢層が高すぎ! 日本では、この先、老人人口が増えるので、こういった企画の映画も出てきそう。

エディット・ピアフ〜愛の讃歌〜 ほか 

2007年07月10日

シネマ・チェック (★=20点 ☆=10点)

エディット・ピアフ〜愛の讃歌〜
La Vie en Rose/M
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01.jpgフランスの国民的歌手として
多くの人から愛された
エディット・ピアフの伝記映画

7月5日公開予定 ★★★☆(TK)

「バラ色の人生」「愛の賛歌」…この手のシャンソンって、バーのカラオケで年輩の人が歌ってる曲というイメージがあり、そのオリジナルを歌っているのは誰なのかなんて考えもしなかった。少なくともこの映画を観る前までは…。
その曲を歌っていたのはフランス人シャンソン歌手のエディット・ピアフ。1940〜60年代にかけて大活躍し、フランスの国民的歌手として多くの人から愛された彼女。その彼女の波乱の生涯を描いた伝記映画が今回紹介する「エディット・ピアフ〜愛の讃歌〜」だ。
1915年12月19日、パリの下町、ベルヴィル地区の貧しい家庭に生まれたエディット・ピアフ。路上で歌いながら生計を立てる母親とともに生活していたが、大道芸人だった父親に連れられ、売春宿を営む祖母の元に預けられる。その後、戦争から戻って来た父親との生活が始まる。ある日、路上で大道芸をする父に促され、母親のように路上で歌声を披露したのをきっかけに、そのチップで生活をするようになり、ついに、ナイトクラブの経営者から見出され、成功へと向かっていく…。

02.jpg 原題の“La Vie en Rose”は、「バラ色の人生」という意味で、彼女の代表曲であるが、ピアフの人生は決してバラ色とは呼べるものではなく、子どものころの一時的な失明など、まさに波乱に満ちた人生だった。彼女の歌が今でも聞かれているのは、そういった苦労を積み重ねた人生が歌に反映され、聞く人の心を掴んでいるからだろう。
晩年は、最愛の恋人を亡くした悲しみからモルヒネ中毒になり、ガンで47歳という短い人生を終える。その20代から晩年までのピアフを演じているのが、フランス人女優マリオン・コティヤール。かなり気難しいところがある彼女を、チャーミングに演じ、共感できる人物に作り上げている。各メディアからも絶賛されているように、彼女の演技は素晴らしかった。まるでエディット・ピアフが乗り移ったとまで言われていて、特に、死ぬ間際の精神的にも肉体的にもボロボロになった彼女が、それでも「歌う」ことに情熱を注ぐ演技は感動的だった。
伝記物にありがちな、時間軸に沿った展開ではなく、幼年時代と晩年とが交互に描かれており、1つ1つのエピソードが際立っている。ただ、そのため、感動的な大きな盛り上がりは少ない。そんなところは、アメリカ映画とは一味も二味も違って、フランス映画だな、と感心してしまった。
しかし、幼年から歌い始め、波乱の人生、国民的歌手、というと、日本人としては美空ひばりを思い起こしてしまう。ピアフはスズメという意味で、名前にも共通性を感じるのだが、このようなスタイルの伝記映画を、美空ひばりをテーマに、日本で制作してみたらおもしろいかもしれない。ふと、そんなことを観終わった後に感じてしまった。…。


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ナンシー・ドリュー
Nancy Drew/PGa
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公開中 ★☆(TK)

 原作はキャロライン・キーンで、少女探偵ものの草分けと呼ばれている小説。アメリカのティーンの間では有名なシリーズで、今までも何度となく映像化された名作を、今回はジュリア・ロバーツの姪であるエマ・ロバーツを主演に映画化。設定を現代に置き換え、携帯なんかも出てくるけど、どうも設定自体が古いため、チグハクな印象。女子高生ナンシーが、長年未解決になっている美人ハリウッド女優死亡事件を独自に調査し解決していくというヒネリのないストーリーで、まさにティーン向けのユルい娯楽映画。主演のエマ・ロバーツも可愛いって言えば可愛いけど、優等生過ぎて特別な魅力はナシ!



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ブラックブック
BlackBook/MA

7月5日公開予定 ★★★★(TK)

 「氷の微笑」「ショーガール」「インビジブル」などちょっとクセのある監督、ポール・バーホーベンの新作。23年ぶりに故郷のオランダに戻って撮った、史実をベースにした戦争映画。1944年、ナチス占領下のオランダ。ユダヤ人歌手のラヘルは、ドイツ軍によって家族を殺されてしまう。レジスタンスに救われたラヘルは、名を変え、髪をブロンドに染めレジスタンス運動に参加する…。あのエログロおじさんポール・バーホーベンってことで、当然主演のカリス・ファン・ハウテンの裸アリ!汚物シーンもアリ!と、今回は彼のエンターテイメント性と、戦争物のシリアスさがうまい具合にブレンドされて、意外とおもしろかった!



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ゴーン
Gone/MA

7月19日公開予定 ★★☆(TK)

 バックパックでオーストラリアを旅するイギリス人カップル、ソフィーとアレックス。彼らが知り合ったアメリカ人のテイラーとともにオーストラリアのアウトバックへと旅する。カップルにシングルの男性が加わることによる微妙な三角関係、それが思いもよらぬ方向へ…。アウトバックにイギリスからのバックパッカーってことで、「ウルフ・クリーク」にかなり被るものがあるサイコ・スリラー。「ウルフ・クリーク」に続き、こんな内容の映画を作ったら、ホントにイギリスからの若い旅行者は激減するんじゃない?って、余計な心配をしてしまう。「ウルフ・クリーク」よりは恐くない!



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ラッキー・マイルズ
Lucky Miles/MA

7月7日公開予定 ★★★(TK)

 1990年、西オーストラリアの人里離れた海岸にインドネシアの漁船が到着。イラクやカンボジアからの避難民が密入国を試みる。ほとんどの者が国境警備員に見つかってしまうが、3人はその難から逃れ、街に向かって砂漠をさまよう…。実話に基づいた、ボート・ピープルの映画というと、シリアスな内容をイメージしてしまうが、これがなかなか笑えるブラック・コメディー。まあ、このテーマをコメディーにしてしまっていいのかどうかは、観てから判断してほしいけど、イラク人、カンボジア人、それにインドネシア人の友情物語として観れば、週末に気楽に見られる映画ではある。