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2007年11月29日

イントゥー・ザ・ワイルド ほか

シネマ・チェック (★=20点 ☆=10点)

イントゥー・ザ・ワイルド
Into The Wild/M
 

ムービーレビュー俳優、ショーン・ペン監督作品
何もかもを捨て、アラスカを目指す若者。彼は真の自由を、真の幸せを見つけたのか?

公開中 ★★★★(TK)

 ショーン・ペンというと、いまだにマドンナの暴力旦那のイメージが強く、あまり好きな俳優ではない。歳をとって『アイ・アム・サム』みたいな映画にも出ているが、いまいち感動できなかった。その彼、実は映画監督もしていて、ジャック・ニコルソンを主演にしたものなど、本数は多くないがいくつかの映画を撮っている。
  今回紹介するのは、そのショーン・ペンの監督作品だが、実のところまったく期待していなかった。彼が、オスカーで主演男優賞を獲得したのは、『ミスティック・リバー』だが、もちろん監督は同じく俳優出身のクリント・イーストウッド。映画監督として大成功している彼を見て、単純に感化されて、またメガホンをとりたくなっただけかと勘ぐってしまったほどだ。
  ストーリーは、ヴァージニア州の裕福な家庭に育ち、エモリー大学を優秀な成績で卒業した22歳のクリストファーが主人公。彼は、大学卒業後、銀行の預金のすべて、2万4,000ドルを慈善団体へ寄付し、自分の車も捨て、所持金すらも燃やしてしまって、放浪の旅に出る。ヒッチハイクと肉体労働を繰り返しながらアメリカを横断し、ヒッピーのカップルや妻子を突然事故で亡くした老人など、さまざまな人たちと出会いながら、アラスカへと北上していく。そして、そこで放置されていたバスを見つけて住み着くようになるが…。

ムービーレビュー  初めはショーン・ペンの顔が脳裏にちらついて映画に集中できなかったが、ストーリーのおもしろさもあり、グイグイ引き込まれてしまった。なんと言っても、実話に基づいているということで、この原作を取り上げた時点で、半分は成功していると思う。ショーン・ペンは監督以外に脚本も担当しており、彼がどれだけこの話に入れ込んでいるのかが理解できると思う。
  真の自由とは? 幸せとは? それらを追い求めるクリス。彼がロスの街で、お洒落なクラブで酒を飲むスーツ姿のビジネスマンに自分の姿を投影する象徴的なシーンがある。多分、大学卒業後、何の疑問も持たずに人生を歩んでいれば、自分自身も同じような生活を送っていただろう、と。
  それを捨ててしまった彼は、ともすれば馬鹿げた子どもじみた奴かもしれない。しかし、自分は彼の中に「志」を感じてしまい、強い共感を覚えた。すごく日本的な感覚だが、その清い「志」によって、彼の行動は必然となり、アラスカは行かねばならない場所になる。何もかも捨て去る意気地のない自分は彼の行動は羨ましくさえ思った。同時に、こういった人間がいた事実が嬉しくもあった。
  負のイメージで見始めたが、2時間20分もある長丁場の映画を、広大な大自然の美しい風景とともに、ダレることなく監督したショーン・ペンを正直、かなり見直してしまった。ということで、今月、お薦めの1本! パール・ジャムのエディ・ヴェダーが担当したサントラも併せてお薦め!


ムービーレビュー
ビー・ムービー
Bee Movie/G
 

12月6日公開予定 ★★(TK)

 アメリカで人気のテレビ番組「となりのサインフェルド」のジェリー・サインフェルドが制作と声優で関わっているアニメーション。個人的には、先に公開されたアメリカのボックス・オフィスで初登場2位、その翌週1位をゲットと、通常の「初登場1位、後は順位を下げていくだけ」というパターンを破った作品として注目。大学を卒業したばかりのミツバチ、バリー。彼はこれから始まる蜂蜜作りに対して疑問を抱き、外の世界へ出ることを決意する。現代社会をちょっと皮肉ったアニメだけど、特別出演の「くまのプーさん」が、大変なことになっていて笑った! まあ家族向けの、可もなく不可もないアニメ。



ムービーレビュー
1408
1408/M

12月6日公開予定 ★★☆(TK)

 ホラーで有名なスティーブン・キングの短編を元にした作品。各地で起こっている超常現象の謎を暴いてベストセラーを連発している作家のマイク。彼の元へ「ニューヨークのドルフィン・ホテルの1408号室」とだけ記したはがきが届けられる。その1408号室は、泊まる客は生きてその部屋を出ることはないという噂の部屋だった…。サミュエル・L・ジャクソンがホテルのマネジャー役で、彼の出てくる前半はなかなかだけど、後半は…。密室劇ということで、主演のジョン・キューザックは出ずっぱりだけど、この手のホテルの恐い話を散々聞いている日本人にしてみれば、ジョンよりも稲川淳二に泊ってほしかった!



ムービーレビュー
ベオウルフ/呪われし勇者
Beowulf/M

公開中 ★★★☆(TK)

 英国文学最古の英雄叙事詩をロバート・ゼメキスが監督。彼の前作『ポーラー・エクスプレス』でも使用された、役者の動きをコンピュータに取り込む、パフォーマンス・キャプチャーの技術で、驚くべき映像を完成させた。始まってすぐは『シュレック』に出てくる人間っぽく見えてたのが、いつしかその違和感は払拭され、最後のドラゴンとの戦いのシーンは、これがCGだってことを忘れるほど。アニメだからできるカメラ・アングルに、3Dの立体感も相まって、まさに新たな映像体験! 映像だけでなく脚本もしっかりしていて、お薦めの大人向けCGアニメ。迫力が違うので、ぜひIMAXの3Dで!



ムービーレビュー
ダディ・デイ・キャンプ
Daddy Day Camp/PG

公開中 ★★☆(JJ)

 エディ・マーフィーが型破りな父親役を演じてヒットした『ダディ・デイ・ケア』の続編。今作はチャーリー・ヒントンとフィル・ライアーソンが、ドジでお騒がせな父親役を好演。夏のある日、子どもたちとデイ・キャンプに出かけたはいいが、キャンプの知識、経験全くなし、というちょっと頼りない父親2人なものだから、あっという間にドタバタ劇に発展。キャンプを通してチームワークの大切さを学んでもらいたい、という父たちの思いはすっかり空回り。それどころかチャーリーはキャンプ続行のため、彼と絶縁状態だった父親に助けを求めざるを得なくなる…。前作に比べるとハチャメチャさに欠けている印象。

2007年11月02日

インランド・エンパイア ほか

シネマ・チェック (★=20点 ☆=10点)

インランド・エンパイア
Inland Empire/M
 

ムービーレビュー「マルホランド・ドライブ」に続く
デヴィッド・リンチ監督の
デビュー30年目の新作

11月15日公開予定 ★★★(TK)

 あの衝撃的なデビュー作「イレイザー・ヘッド」から、もう30年――。独特の世界観を持ち、日本ではテレビ・ドラマ「ツイン・ピークス」で有名な監督、デヴィッド・リンチの新作が今回紹介する「インランド・エンパイア」だ。
  前作の「マルホランド・ドライブ」は、ナオミ・ワッツが大ブレイクするきっかけとなったことでも話題を呼んだが、それだけではなく、脳がでんぐり返ったような展開に、ハリウッドのキラキラ感、主演女優2人の濃密な演技と、相変わらずのリンチ節炸裂で、大好きな映画の1本。
  今回の「インランド・エンパイア」は、またまたハリウッドを舞台にした女優の話ということで、「マルホランド・ドライブ」と類似し、謎解きも期待できるのでは ? と、公開前からファンの間で話題になっていた映画だ。
  ストーリーは、ハリウッドの女優ニッキー・グレイスの自宅に見知らぬ老婦人が訪ねてくるところから始まる。その老婦人は、ニッキーに対して、予言をするのだが、その予言通り、新作映画の主役に抜擢される。しかし、その映画は主役の2人が謎の死を遂げ製作が中止に追い込まれていた、ポーランド映画「47」のリメイクだった。映画の撮影が進むにつれ、作品中の役に同調するようにニッキーは相手役のデヴォンと不倫関係になっていく。そして、彼女の周りで不可解な事が起こり始め、やがて現実と映画の区別が付かなくなっていく…。

ムービーレビュー  見ていて、今のシーンは撮影中のリメイクなのか、オリジナルの映画「47」なのか分からなくなるし、さらに演劇の一部のようなウサギ人間が出てくる部屋に、それらをモニターで見ている「ロスト・ガール」と、なんと5つの世界が次第に入り混じって出てくるからもう大変 ! 「マルホランド・ドライブ」では、その現実なのか、夢なのか、混濁した世界がおもしろかったが、ここまでくるとお手上げ !
  しかも画像が全編デジタル・ビデオで撮影された、かなり粗い画像で、さらに上映時間は3時間近くという、実験的な映画。ファンの人は、3時間もリンチ・ワールドが楽しめるとあって、たまらないだろうが、それ以外の人にとっては拷問のような作品だ。実際、映画途中で席を立つ人、続出 !
  まあ、そうは言っても、デヴィッド・リンチです。不条理な展開や、時間や空間、ストーリーのねじれ方など、普段では絶対にできない悪夢のような映画体験ができるのも事実。もともとこの映画、ちゃんとした台本がないまま撮影がスタート、俳優には当日に数ページの台本が配られたそうで、逆に、そんな状況でよく映画を完成させたものだと感心してしまう。まあ、映画として完成していないと感じる人もいるでしょうが…。
  日本人にとっては、ポケベルが鳴らずに日本女性を敵にまわした裕木奈江が、相変わらずのポヨポヨ演技で出演しているのにも注目。


ムービーレビュー
アクロス・ザ・ユニバース
Across the Universe/M
 

11月1日公開予定 ★★★☆(TK)

 タイトルが「アクロス・ザ・ユニバース」、登場人物の名前がジュード、ルーシー、セディ、ジョジョって言ったら、ハイ、もうお分かりですね、ビートルズの楽曲を全編にちりばめたミュージカルです。60年代、イギリスのリバプールで育ったジュードが生みの父親を探しにベトナム戦争中のアメリカに渡り、そこで大学生のマックスと知り合う。そのマックスの妹、ルーシーとジュードは恋に落ちるが…。U2のボノや、ジョー・コッカーも出演し、「ライオン・キング」でトニー賞を受賞した舞台出身のジュリー・テイモア監督のカラフルな映像も見所。アイデア的にはミュージカル「マンマ・ミア」からかな ?



ムービーレビュー
エンジェル
Angel/M

11月1日公開予定 ★★★(TK)

「8人の女たち」「スイミング・プール」などフランス映画界を代表する監督フランソワ・オゾンの新作は、初の英語作品。1900年代初頭のイギリス。田舎町で小さな食料品店を営む母親と店の2階に暮らすエンジェルは、上流階級の生活に強い憧れを抱いている少女。その憧れを小説に託した彼女は、ついに作家としてデビューし、望んでいた上流階級の暮らしや豪邸、画家との結婚、すべてを手に入れる。しかしそれはいつまでも続かなかった…。自分は由緒正しい貴族の娘として生まれているはずだったと思い込んでるようなイヤな女を、それでも共感できるキャラクターとして描いてるのは、さすがオゾン。



ムービーレビュー
30デイズ・オブ・ナイト
30 Days of Night/MA

11月15日公開予定 ★★☆(KK)

 全米映画興行収入ランキングで、初登場1位となったジョシュ・ハートネット主演のバンパイア・スリラー。アラスカ州にある米国最北端の町、バローでは、冬の間30日にわたり日が昇ることがない。その暗闇の中から現れたバンパイアたちが町に残った住人を次々と襲いはじめる。夜明けが訪れるまでの30日間を生きのびることができるか…。「スパイダーマン」のサム・ライミがプロデュース、監督があのマジで恐かった「ハード・キャンディー」のデビッド・スレードということで期待したスリラーだけど、ゾンビ映画などで、もうこの手のネタが出尽くしてる感があって、どっかで見たようなシーンの連続ばかり。



ムービーレビュー
ハート・ブレイク・キッド
The Heartbreak Kid/MA

11月22日公開予定 ★☆(TK)

「メリーに首ったけ」の監督ピーター・ファレリー、ボビー・ファレリー兄弟の新作コメディー。1972年の映画「ふたり自身」をベン・スティラーを主演にリメイク。40歳にして独身のエドワードは、理想の相手ライラと出会いすぐに結婚するが、新婚旅行で彼女の身勝手でわがままな正体が発覚する。そして、その旅行中にまさしく本当の理想の相手が現われたエドワードは…。ファレリー兄弟ってことで相変わらずお下品なギャグが続くが、ポイントは、結婚相手の女の子。確かに彼女、ドン引きするほど変な性格なんだけど、中途半端にいい人だから同情してしまった。ラストも、意外と言うより、呆れた終わり方。