潜水服は蝶の夢を見る

The Diving Bell and The Butterfly/M
★=20点 ☆=10点
体が麻痺し、自由を奪われたジョン
彼は20万回のまばたきで
自伝を書き上げる
2月14日公開予定 ★★★★(TK)
年も明け、映画関係の賞レースが本格的に始まったが、アカデミー賞の前哨戦とも呼べるゴールデン・グローブ賞が、全米脚本組合のストライキによって、前代未聞の記者会見スタイルで発表された。
映画関係だけでなく、テレビ関係の出演者も集うゴールデン・グローブ賞は、アカデミー賞よりはリラックスした雰囲気で、年明け一番のビッグ・イベントだったので、味気のない淡々とした受賞発表は本当につまらなかった。
そして、アカデミー賞も各ノミネートが発表されたが、未だにこのストの影響をどれだけ受けるのかは不明の状況。ただ、ゴールデン・グローブ賞に続いてアカデミー賞まで受賞イベントがキャンセルされてしまうと、全米脚本組合への風当たりは相当強くなると思われるので、これ以上ストライキが長期化するのはあまり得策とは思えない。早く交渉が成立して、アカデミー賞が例年通りに開催されるのを祈るばかりだ。
そのゴールデン・グローブ賞で、監督賞、外国語作品賞を受賞、アカデミー賞では、監督・編集・撮影・脚色の4部門でノミネートされているのが『潜水服は蝶の夢を見る』。
パリのファッション誌「エル」の編集長ジャン・ドミニク。突然意識を失った彼が、昏睡状態から目が覚めると、左目の視覚とまぶたの筋肉、そして聴覚以外のすべてが麻痺して動かなくなっていた…。このオープニングから、映画前半は、彼の視線でのカメラ・ワークが続き、思わず自分で体をモゾモゾと動かして、自分の体が麻痺していないかを確かめてしまったほど、リアリティーのある撮影だ。それが次第に第三者の視点へとカメラが移行していき、ようやくジャンの置かれている状況を直視することになる。

まあ、普通の人間なら絶望で打ちのめされてしまうだろうが、言語療法士アンリエットから、唯一動かせるまぶたを使ってコニュニケーションをとる方法を聞かされた彼は、それによって、自伝を綴ることを決意する。その方法というのは、使用頻度の高い順に彼女がアルファベットを読み上げ、必要な文字が出てきた時にウインクで合図をするというもの。この途方もなく時間がかかる作業を繰り返す…。
なんとなく暗く重い闘病物をイメージするだろうが、ジャンのユーモラスなナレーションと、フランス語の響き、それにカラフルで明るく温かな映像で、不思議な浮遊感のある作品になっている。美人ぞろいのキャスティングも狙ったものだと思う。
話の内容から分かると思うが、すべて実話に基づいており、人間の生きる力をひしひしと感じる感動作。ただ、彼と奥さん、それに浮気相手の女性の関係など、彼を取り巻く人々をもう少し掘り下げてほしかった。
監督は、『バスキア』『夜になるまえに』のジュリアン・シュナーベル。主演のジャンを演じるのはフランス人俳優マチュー・アマルリック。彼は、ダニエル・クレイグがジェームズ・ボンドを演じる、次作のボンド・ムービーの悪役に配役されていることでも話題。