エディット・ピアフ〜愛の讃歌〜 ほか
シネマ・チェック (★=20点 ☆=10点)
エディット・ピアフ〜愛の讃歌〜 La Vie en Rose/M |
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フランスの国民的歌手として
多くの人から愛された
エディット・ピアフの伝記映画
7月5日公開予定 ★★★☆(TK)
「バラ色の人生」「愛の賛歌」…この手のシャンソンって、バーのカラオケで年輩の人が歌ってる曲というイメージがあり、そのオリジナルを歌っているのは誰なのかなんて考えもしなかった。少なくともこの映画を観る前までは…。
その曲を歌っていたのはフランス人シャンソン歌手のエディット・ピアフ。1940〜60年代にかけて大活躍し、フランスの国民的歌手として多くの人から愛された彼女。その彼女の波乱の生涯を描いた伝記映画が今回紹介する「エディット・ピアフ〜愛の讃歌〜」だ。
1915年12月19日、パリの下町、ベルヴィル地区の貧しい家庭に生まれたエディット・ピアフ。路上で歌いながら生計を立てる母親とともに生活していたが、大道芸人だった父親に連れられ、売春宿を営む祖母の元に預けられる。その後、戦争から戻って来た父親との生活が始まる。ある日、路上で大道芸をする父に促され、母親のように路上で歌声を披露したのをきっかけに、そのチップで生活をするようになり、ついに、ナイトクラブの経営者から見出され、成功へと向かっていく…。
原題の“La Vie en Rose”は、「バラ色の人生」という意味で、彼女の代表曲であるが、ピアフの人生は決してバラ色とは呼べるものではなく、子どものころの一時的な失明など、まさに波乱に満ちた人生だった。彼女の歌が今でも聞かれているのは、そういった苦労を積み重ねた人生が歌に反映され、聞く人の心を掴んでいるからだろう。
晩年は、最愛の恋人を亡くした悲しみからモルヒネ中毒になり、ガンで47歳という短い人生を終える。その20代から晩年までのピアフを演じているのが、フランス人女優マリオン・コティヤール。かなり気難しいところがある彼女を、チャーミングに演じ、共感できる人物に作り上げている。各メディアからも絶賛されているように、彼女の演技は素晴らしかった。まるでエディット・ピアフが乗り移ったとまで言われていて、特に、死ぬ間際の精神的にも肉体的にもボロボロになった彼女が、それでも「歌う」ことに情熱を注ぐ演技は感動的だった。
伝記物にありがちな、時間軸に沿った展開ではなく、幼年時代と晩年とが交互に描かれており、1つ1つのエピソードが際立っている。ただ、そのため、感動的な大きな盛り上がりは少ない。そんなところは、アメリカ映画とは一味も二味も違って、フランス映画だな、と感心してしまった。
しかし、幼年から歌い始め、波乱の人生、国民的歌手、というと、日本人としては美空ひばりを思い起こしてしまう。ピアフはスズメという意味で、名前にも共通性を感じるのだが、このようなスタイルの伝記映画を、美空ひばりをテーマに、日本で制作してみたらおもしろいかもしれない。ふと、そんなことを観終わった後に感じてしまった。…。
7月5日公開予定 ★★★★(TK) 「氷の微笑」「ショーガール」「インビジブル」などちょっとクセのある監督、ポール・バーホーベンの新作。23年ぶりに故郷のオランダに戻って撮った、史実をベースにした戦争映画。1944年、ナチス占領下のオランダ。ユダヤ人歌手のラヘルは、ドイツ軍によって家族を殺されてしまう。レジスタンスに救われたラヘルは、名を変え、髪をブロンドに染めレジスタンス運動に参加する…。あのエログロおじさんポール・バーホーベンってことで、当然主演のカリス・ファン・ハウテンの裸アリ!汚物シーンもアリ!と、今回は彼のエンターテイメント性と、戦争物のシリアスさがうまい具合にブレンドされて、意外とおもしろかった! |
7月19日公開予定 ★★☆(TK) バックパックでオーストラリアを旅するイギリス人カップル、ソフィーとアレックス。彼らが知り合ったアメリカ人のテイラーとともにオーストラリアのアウトバックへと旅する。カップルにシングルの男性が加わることによる微妙な三角関係、それが思いもよらぬ方向へ…。アウトバックにイギリスからのバックパッカーってことで、「ウルフ・クリーク」にかなり被るものがあるサイコ・スリラー。「ウルフ・クリーク」に続き、こんな内容の映画を作ったら、ホントにイギリスからの若い旅行者は激減するんじゃない?って、余計な心配をしてしまう。「ウルフ・クリーク」よりは恐くない! |
7月7日公開予定 ★★★(TK) 1990年、西オーストラリアの人里離れた海岸にインドネシアの漁船が到着。イラクやカンボジアからの避難民が密入国を試みる。ほとんどの者が国境警備員に見つかってしまうが、3人はその難から逃れ、街に向かって砂漠をさまよう…。実話に基づいた、ボート・ピープルの映画というと、シリアスな内容をイメージしてしまうが、これがなかなか笑えるブラック・コメディー。まあ、このテーマをコメディーにしてしまっていいのかどうかは、観てから判断してほしいけど、イラク人、カンボジア人、それにインドネシア人の友情物語として観れば、週末に気楽に見られる映画ではある。 |