マイケル・ムーア監督:シッコ ほか
シネマ・チェック (★=20点 ☆=10点)
シッコ Sicko/M |
「華氏911」の
マイケル・ムーア監督
今回はアメリカの医療問題が標的
8月9日公開予定 ★★☆(TK)
オスカー受賞作「ボウリング・フォー・コロンバイン」「華氏911」と、今まであまり注目されることのなかったドキュメンタリー映画を、一流のエンターテイメントに仕上げたマイケル・ムーア監督。その彼の新作ドキュメンタリーが、今回紹介する「シッコ」。
タイトルの日本語の響きは、ちょっといただけないが、英語の意味は、精神障害者、変質者。今回の映画では「病人」という意味で、アメリカの医療システムを取り上げている。
オーストラリアには、日本の国民健康保険のような「メディケア」があるが、福祉が充実しているオーストラリアにしては、ほかの失業保険などの制度と比べると、かなり劣っている。多くの人が「メディケア」では十分な安心が得られないので、民間の医療保険に加入しているのが現実だ。しかし、この映画を観ると、それでもあるだけはマシと思わされる。
今まで知らなかったが、アメリカでは国民健康保険制度がなく、民間保険会社への加入は必須だそうだ。しかし、この民間の医療保険が、またいろいろな問題をはらんでいて、驚くべき事実が次々と出てくる。
もともと、アメリカの医療費は世界一と言われているように、バカ高なのだが、当然保険料もそれに伴って、バカ高!だから、その保険料が払えず、保険に未加入の国民が5,000万人もいるそうだ。冒頭に出てくるオジサン、保険には加入していなくて、ある日、事故で指を2本切断した。そして、医者から「中指を縫合する治療費6万ドル、薬指の縫合は1万2千ドル」と言われ、結婚指輪をはめる薬指のためにバーゲン価格の1万2千ドルを選んだそう。なので、彼の中指はありません!
まあ、保険に入ってなかったのが悪かった、と言えばそれまでだけど、保険に加入するためにも条件があって、保険会社から拒否されることもあり、たとえ保険に入っていたとしても、保険会社は民営なので、当然利益追求のために、いろいろな条件を付けては保険金請求を拒否する…。あの先進国と言われているアメリカで、こんな事態が起こってるとは信じられない。ただ、毎回いい素材を見つけてくるマイケル・ムーアだけど、今回は、取り上げた制度自体が大きすぎて、あくまで問題提議あたりで留まってるところが惜しい。
映画全体としても、過去の作品のような、アニメーションを使ったり、体当たり取材的なものがかなり弱くなっているので、内容ではなく、ドキュメンタリー映画として見た時、あまりパワーを感じられなかった。フランス、イギリス、キューバと他国の医療制度と比べるシーンがやたらと長く、その辺りはサラリと扱って、もっと自国が抱える問題に焦点を当て、保険会社でも、政治家でも、マイクをガンガンと突き付けてほしかった。やはり激突取材が彼の面白いところだと思う。
デーマとしてはマル、だけど、ドキュメンタリー映画としては、もう少し工夫が必要な気がした。
8月2日公開予定 ★★★☆(TK) オスカーにノミネートされた「ハッスル・アンド・フロウ」のクレイグ・ブリュワー監督の新作。子どものころの虐待の影響でセックス依存症になってしまったレイ。道端で倒れていた彼女を、家に連れて帰り看病する元ブルース・ミュージシャンのラザラス。彼は、音楽を通して彼女の心を再生していくのだが…。サミュエル・L・ジャクソンがクリスティーナ・リッチを鎖で監禁、調教!ということで、かなり過激な映画だと思うかもしれないけど、2人のストイックな関係に、サミュエルのブルースと、味わいの深い作品に仕上がっている。ジャスティン・ティンバーレイクはがんばってるけど、主演2人に対してちょっと役不足か? |
8月16日公開予定 ★☆(TK) お隣、ニュージーランドからのホラー映画。遺伝子操作に失敗した羊が人食い羊となって人間に襲いかかるというストーリー。ま、おバカ映画です! しかも、羊に噛まれた人間は羊人間になってしまうという展開で、ゾンビ羊版、と言った感じ。人間の数より、羊の数の方が多いというニュージーランドならではの企画なんだけど、これがあまりに定番過ぎて、笑えない…。おバカ映画って好きなんだけど、セオリー通りの展開で、すべて先が読めてしまうのは、最初のアイデアだけで強引に脚本を作ってしまったからか? それにしても、人の皮膚ってあんなに伸びるもんなんでしょうか? |
8月2日公開予定 ★★★(TK) ベルリン映画祭のオープニング作品。イギリスからカナダにやって来たアレックス、彼はヒッチ・ハイカーのヴィヴィアンを車に乗せることにする。しかし、事故で彼女は死んでしまい、事故の説明をしようと、彼女の母親に会いにいくのだが…。「ハリ・ポタ」でもお馴染み、アラン・リックマンとシガニー・ウィーバーが共演する、ユーモアの効いた心温まる映画。シガニー・ウィーバーの演技がちょっと鼻につくんだけど、日本人としては、ドリフターズの「ミヨちゃん」のB面、「のってる音頭」で踊りまくるシガニー・ウィーバーが見れるというお得(?)なシーンが用意されている。雪のケーキのシーンも好き! |
8月23日公開予定 ★★(TK) アメリカ、フロリダのボイントン・ビーチ。退職者が大勢住むビーチ沿いの特別住宅区域には、夫や妻と死別した人のためのクラブがある。そのクラブで起こる出会いや別れ…。おじちゃん、おばちゃんのロマンティック・コメディー映画とでも言えようか。孤独に耐えられず、嘘をついてクラブに参加する女性、インターネットのサイトでメールを交換する人もいれば、近くのバーで相手を見つける人もいる。ちょっとした悲しみに笑い…、なかなかいい映画なんだけど、やはり年齢層が高すぎ! 日本では、この先、老人人口が増えるので、こういった企画の映画も出てきそう。 |